安達太良を望む家

福島県福島市 2014

所在地:福島県福島市
用途:専用住宅
構造:木造
階数:地上2階
敷地面積:231.97 ㎡
建築面積:97.62 ㎡
延床面積:143.96 ㎡
施工:有限会社東北テクノホーム
竣工年月:2014年2月

 

一盃森の家

建設地は、一盃森という市街地に鎮座する小山と市営運動公園の狭間にあり、市街地にしては緑豊かな場所である。道路を背にして敷地に立つと、安達太良連峰の山並みを望むことができるが、それは隣接する運動公園に整然と並ぶテニスコートのおかげである。その反面、敷地境界の先には、コートを区画するネットフェンスはあるものの、週末のテニス大会ともなると、そのフェンスの手前側(敷地の目と鼻の先)に、観客が大勢押し寄せることも珍しいことではないそうである。施主のご夫妻からは、そのような敷地の状況に配慮しつつも、コンセプトとして、「自然と仲良く暮らすおうち」というテーマを頂戴し、設計に着手した。

まず、自然と仲良く暮らすためには、自然に対してある程度対等に付き合える家でなければならない。屋根は耐候性の優れる瓦葺を選択した。室内への日射の侵入や外廻りの風雨による劣化を防ぐため、瓦葺き屋根の軒の出も大きく確保している。外皮の断熱性能や通風経路など、仲良くするための基本性能はきっちり確保した。そのうえで、自然の恵みを日々実感できる仕掛けとして太陽熱温水器と雨水利用タンクを設けた。庭先には、ちょっとした家庭菜園を楽しめるスペースを設けている。暖房設備も施主の希望で薪兼用ペレットストーブを導入しその恩恵に浴するとともに、「おうち」にとどまらない自然との関わりが期待される。

テニスコートへの対応として、居間のレベルを人の背丈ほど地面からもち上げるとともに、その手摺を幅広の横桟とした外部テラスを設け、視線が正対する事態を避けた。そのため、住宅全体は、一般的な2階建てのヴォリュームの中に、①玄関・クローク・水廻り、②居間・食堂、③寝室・子供室、④ロフトと4つの階層をなす構成となった。建具を開放すれば②~④は連続する一体の空間となり、自然(室内環境)との関わりとともに、家族どうしの関わりもより深まるものと考えている。

暖房は薪兼用ペレットストーブ1台、給湯は水道の圧力で循環し熱交換を要しない単純な太陽熱温水器とガス給湯器を接続させたハイブリットシステム、トイレの洗浄水は渇水時には水道管に手動で切り替えることのできる雨水利用システムを採用するなど、自然と暮らしの関わりを随所で模索している。この「おうち」を通して、暮らしの中での“ひと手間”を許容したり工夫することで、新たな自然との関わりが意識できることを学んだ。

 

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